矢野誠一さんを悼む 「芸人」の精神を愛し論じた評論家
矢野誠一さんを悼む 「芸人」の精神を愛し論じた評論家
書きも書いたり。泉下に旅だった芸能評論家、矢野誠一さんの仕事をふりかえるとそんな言葉が思い浮かぶ。2023年刊「芝居のある風景」の巻末にある著作目録によれば、その時点で単著が49、共著・編著が12。単著のうち落語をめぐるものがおよそ3分の1を占めるが、評伝、酒食の話、明治大正の史談とおそろしく幅が広い。
人でも舞台でも、直線的に評することがなかった。落語の枕のようにふわりと語りだし、やがて読む人…